炭酸アンチヒーロー
・「……心配、したんだよ」
「ヒロ、ついに押し倒しちゃった?」
昼休み中の廊下。自分の右隣を歩く悠介にそう言われた数秒後。
「はあああ?!!」
俺は思いきり、語尾上がりのでかい声を上げてしまった。
「おいおいやめろよなー、周りの人たち振り返ってんじゃん」
「てめーが、いきなり変なこと言うからだろ!」
「変? 変なのは、ヒロの方だろが」
理不尽にも迷惑そうな顔でこちらを見てくる悠介に反発すれば、あっさりとそう返される。
俺は思わず、言葉を飲み込んだ。
「言っとくけどな、付き合いの長い俺にはまるわかり。ここ最近のヒロ、ずっとテンション低いっつーか、落ち込んでんだろ」
「………」
「だからとうとう蓮見さんのことうっかり襲っちゃって、その罪悪感にでもさいなまれてんのかと思って」
「……はあ……」
当たらずとも遠からず、な悠介の言葉に、俺は何も言えず。
代わりに、深く長いため息を吐いた。