炭酸アンチヒーロー
「な、なんで、そんな……」



ようやくこぼれ出たのは、そんな情けないつぶやきだ。

ちっちっち、と佳柄が人差し指を振ってみせる。



「もーはすみんってば、あたしたち何年の付き合いだと思ってるのー?」

「や、実際知り合ったの高校入ってからだから、まだ2年ちょっとなんだけどね」

「あららららー、そうだっけ?」

「でもまあ、そんなの関係なく……私たち、まおのこと大好きだからさ。だから、そのまおが悩んでるのわかってて、知らないフリなんてできないんだよ」

「そーだよはすみん、大好きだぞ!」

「や、そこ今推すとこじゃないから……」



目の前でテンポ良く繰り広げられる、いつも私に元気をくれるふたりの会話。

さっきまでは、そんな気持ちになれなかったはずなのに。そのやり取りを聞いていたら、不意に笑いがこみ上げてきた。



「……ふ、ふふっ、あははっ」



口元を片手で押さえつつ、思わず小さく声に出して笑う。

そんな私に、沙頼と佳柄は一瞬きょとんとするけれど。

だけど同じように、顔を見合わせてくすくすと笑いだした。


……ああ。やっぱり私は、このふたりと一緒にいるのが好きだ。

そしてそんな彼女たちが、本当に私のことを思って、この場所に連れて来てくれたことがわかったから。



「……うん。ふたりとも、ありがとう。……あのね、」



私はとうとう、今までずっと自分の胸の内だけにしまっていたここ最近の出来事を、ポツポツと話し始めたのだった。
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