炭酸アンチヒーロー
「まお」



名前を呼ばれるのと同時に、沙頼がテーブルの上にあった私の左手を取った。

きゅっと包み込むように握られて、驚いた私は顔を向ける。



「話してくれて、ありがと。けどね、話を聞くかぎり……まおの中で、もうほとんど答えは出てるように思えるけどな」

「え……?」



目の前には、やわらかい表情を浮かべている沙頼。

向かい側の佳柄も、こくりとうなずいた。



「……“何”が、まおのその気持ちにブレーキをかけちゃってるのか。自分でも、わかってるんじゃない?」

「──、」



核心をつかれ、思わず息を飲む。

そして沙頼は、どこか困ったように笑っていた。



「“それ”を解決しないと、まおはまだ、前には進めないのかもね」



……何が、ブレーキをかけてるのか。

私は何に、引っかかっているのか。



「……うん」



うん。ずっと、目を逸らし続けながら。

たぶんずっと、自分でもわかってた。

まだ、私は──終わらせられて、いないこと。
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