炭酸アンチヒーロー
うたた寝を邪魔しない適度な物音を聞きながら、まどろみの中をさまよう。

そうしてしばらくすると、誰かが、自分のすぐそばで立ち止まった気配がした。

ああ、目を開けなきゃ。

わかってはいてもなんだかひどく億劫で、私はそのままの状態から動かない。

──だけど。



「おーい、生きてる?」

「ッ!?」



すぐ立ち去るだろうと考えた私の予想に反し、その人物に軽く肩を揺すられる。驚いた私は、慌てて目を開けた。

……でも驚くべきことは、それだけじゃない。



「あ、やっぱり蓮見さんだった」



そう言って目の前で笑っているのは、私が寝ぼけているわけじゃないとしたら、間違いなくあの金子くんで。

赤いTシャツにハーフパンツというラフな出で立ちの彼を、ベンチに座ったまま、思わず硬直して見上げた。
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