炭酸アンチヒーロー
「びびったー、こんなとこで誰か寝てるとは思わないし」

「え、あ……」

「あーいきなりごめんね。俺、同じ学年の金子っていうんだけど。つーか、もしかして蓮見さんマジ寝してた? 俺起こさない方がよかったかなー?」

「あ、う、ううんっ」



相変わらず、混乱はしたまま。けれどもこちらをうかがうような金子くんの言葉に慌てて首を横に振れば、彼は「そー?」と言ってまた笑った。


……というか、あの。



「なんで、私の名前……」

「へ? ……あ、あ~~」



困惑しつつ口にした私の疑問に、金子くんはなんだか少し、気まずそうな表情で頭をかく。



「ん~……蓮見さんは、覚えてないかもしれないけどさ。前に1度、俺が部活帰りに部員の奴らと歩いてたら、玄関あたりですれ違ったことがあって」

「え」



覚えてない、わけなんてない。

だってそれは、私と金子くんの、たった1度きりの──……。
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