炭酸アンチヒーロー
「『お疲れさま』って、蓮見さん俺たちに言ってくれたんだよ。んでそのとき一緒にいた奴がさ、蓮見さんのことかわいーって言ってて。だからなんとなく、覚えてたんだ」



気ぃ悪くしたらごめんね、と申し訳なさそうに付け足して、金子くんが苦笑する。

私はそんな彼を見上げながら、言葉を発することができずにいた。


金子くんは──何の接点もなかったはずの私のことを、知っていてくれていたの?

……“ゼロ”じゃ、なかった。金子くんにとって、私の存在はゼロなんかじゃなかった。



「──ッ、」



どうしよう、うれしい。

……うれしい、けど──……どきどき、しない。

前みたいに、胸が締めつけられるような……そんな痛いくらいの、高鳴りがない。
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