炭酸アンチヒーロー
「……私、覚えてるよ」

「え! マジ?」

「ふふっ、うん。金子くんのことも、知ってる」

「おお、そっか! なんだ、あせって損したー」



私が思わず笑みを漏らすと、つられたように金子くんも笑う。

……うそみたいだ。今こんなふうに、金子くんと普通におしゃべりしてるなんて。



「ははっ、友達が言ってたことわかるかも。蓮見さんってなんか、癒し系」

「ええ? そ、そうかなぁ」

「うん、そんな感じ」



うなずいて、またニッと口角を上げた金子くん。

だけどふと何かに気づいたように、視線を体育館の方へと向ける。



「やば、もうすぐ休憩終わるかも。……ごめんねいきなり、変なこと言って。別に俺蓮見さんのこと、とって食おうってんじゃないからね?」

「ふふ、そんなこと思ってないよ。……金子くんは、中井さんと付き合ってるんだよね?」

「あは、よく知ってるね」



腰に手をあてながらそう返す金子くんの表情は、どこかうれしそうで。

それじゃ、と言ってバッシュを履いた足の向きを変えようとした彼を、私はまた引きとめた。
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