炭酸アンチヒーロー
「ねぇ、金子くん。……中井さんのこと、すき?」



その問いに、一瞬、金子くんは少しだけ驚いたような顔をした後。



「……うん、すきだよ」



どこか照れくさそうに、だけどはっきりと言う。

その言葉を聞いた瞬間。胸の奥で、何かがすうっと軽くなったような気がした。

きっとそれは……私が『私』を許すことができた、合図だ。



「金子くん」

「ん?」

「──ばいばいっ!」



胸の中、うれしさでいっぱいになる。

だって私たち、友達みたいだ。

……“友達”みたいに、私、接することができてるよね?


大げさすぎるくらいに手を振る私を振り向きながら、金子くんは笑って片手を挙げた。



「うん、ばいばい」



涙は、出ない。

やっと、終わらせることができたから。
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