炭酸アンチヒーロー
◆ ◆ ◆
俺と蓮見の間に何の変化もないまま、数日が過ぎる。
試合が近いということもあり、俺は相変わらず、放課後は部活に明け暮れていた。
「ふぃ~、腹減ったー」
「どーする、コンビニ寄る?」
「あー、そうすっか」
そして試合をあさってに控えた、金曜日の18時過ぎ。
用具を片付け終え、数人の部員連中と部室へ向かおうとしていた俺は、ふとグラウンドを出てすぐの場所に人影があることに気がついた。
その人物が誰なのかわかった瞬間──驚いて、思わず固まってしまう。
「……あ、辻くん」
「は、すみ?」
こちらに気づいて顔を上げた蓮見に、間抜けな声を返した。
気を遣ったのか、周りにいた奴らは「先行ってるからなー」と言い残しそそくさと去っていく。
この場に残されたのは、俺と蓮見だけ。