炭酸アンチヒーロー
私たちが移動したのは、ひとけのない球場裏。

彼と一定の距離を保ったまま、私は静かに話し始めた。



「……私、ずっとおかしかったんだよ」

「は、」

「ずっとおかしかったの。……辻くんに、『俺のことすきになれば』って、言われた日から」



教室にいれば、辻くんの声を無意識に探してしまう。

避けられていたときは、すごく胸が苦しくて。

……私は、その感情の名前を知っていた。



「本当は、私、どこかで気づいてたのかもしれない。……だけど、知らないフリしてた。私は、金子くんのことを“すきなはず”だったから」



ずっと、一途な恋に憧れていた。

だから自分も、そうありたいって思ってた。


……だけど。
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