炭酸アンチヒーロー
もう遅いって、言われないかな。

なんで今さらって、思われないかな。

だけど、もう、止まらない。



「……私、辻くんのことがすきだよ……っ」



瞬間、視界いっぱいにユニフォームの白が映って、私はあたたかいものに包まれた。

少し遅れて、自分が辻くんに抱きしめられていることに気づく。



「つっ、辻く──」

「……悪い。もうしばらくこうさせて」



すぐ耳元で、彼の低い声。

どうやって触ったらいいのかわからないみたいに、ぎこちなく。だけどぎゅっときつく、背中と肩に腕をまわされていた。

驚いた拍子に目を見開いた私の頬に、涙がひとすじ流れる。



「ごめん、ずっと苦しめて。……『打て』って蓮見の声、ちゃんと聞こえてたよ」

「ッ、」

「聞いた瞬間、打てるって思った。もうきっと俺、蓮見がいないとだめなんだ」



ささやくような彼の言葉が、くちびるから直接、耳に注がれる。

私もまたためらいがちに、辻くんのユニフォームの背中をきゅっと掴んだ。
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