炭酸アンチヒーロー
今日は、帰りのホームルームの後委員会があった。それが思いのほか長引いて、教室に荷物を取りに戻ろうと1階の渡り廊下を早足で通りかかったのが、ついさっきのこと。
するとすぐそばの中庭から、他でもない自分のすきな人の声が聞こえてきたんだ。
こうなると、ちらりともでもいいから姿を見たいなーなんて思ってしまうのは恋する女子の性というもの。
だってチキンな私に話しかける勇気なんてないから、この片思いでできることといえば控えめに彼を見つめることくらいなのだ。我ながらいくじなし……。
そんなこんなで開いていた廊下の窓からこっそり外を覗いてみた私を迎えたのは、先ほどの正真正銘告白真っ只中のシーンで。
おまけに告白の相手は、学年内でも美人なうえ性格もいいと評判な中井さん。私みたいな地味女子なんて足もとにも及ばない、キラキラした存在の女の子。
もう、私のささやかな恋心は完膚なきまでに叩きのめされてしまった。いくらなんでも私に与えるダメージ大盤振る舞いすぎじゃないですか、神様。
「……うぅ……」
ぽたり。無機質な廊下に、しずくが一粒落ちる。
それを自分の涙だと理解するには、思いがけなく震えた声と、目頭の熱さだけで十分だった。
まだ、中庭の方からはかすかにふたり分の話し声がする。
聞きたくない。聞きたくないよ。
「──蓮見?」
突然、上から降ってきた低い声に。自分が泣いていることも忘れて、反射的に顔を上げた。
そこにいたのは。
「つじ、くん……?」
同じクラスの……辻くん、だ。
涙で視界がぼやけている、けど。なんとなく、つり目がちなその瞳が、驚いたようにいつもより見開かれていることがわかる。
背の高い彼をここから見上げていると、ちょっぴり首が痛い。濡れた目元を拭うことも忘れ、口を開いた。
「辻くん、どうし、たの?」
「いや、それはこっちのセリフだし」
言いながら辻くんは、廊下の隅でへたり込む私の斜め前へ、同じようにしゃがんだ。
そして視線を窓の外へ向けて、何かに気づいたように目をまたたかせてから、ああ、と納得したふうに一言。
するとすぐそばの中庭から、他でもない自分のすきな人の声が聞こえてきたんだ。
こうなると、ちらりともでもいいから姿を見たいなーなんて思ってしまうのは恋する女子の性というもの。
だってチキンな私に話しかける勇気なんてないから、この片思いでできることといえば控えめに彼を見つめることくらいなのだ。我ながらいくじなし……。
そんなこんなで開いていた廊下の窓からこっそり外を覗いてみた私を迎えたのは、先ほどの正真正銘告白真っ只中のシーンで。
おまけに告白の相手は、学年内でも美人なうえ性格もいいと評判な中井さん。私みたいな地味女子なんて足もとにも及ばない、キラキラした存在の女の子。
もう、私のささやかな恋心は完膚なきまでに叩きのめされてしまった。いくらなんでも私に与えるダメージ大盤振る舞いすぎじゃないですか、神様。
「……うぅ……」
ぽたり。無機質な廊下に、しずくが一粒落ちる。
それを自分の涙だと理解するには、思いがけなく震えた声と、目頭の熱さだけで十分だった。
まだ、中庭の方からはかすかにふたり分の話し声がする。
聞きたくない。聞きたくないよ。
「──蓮見?」
突然、上から降ってきた低い声に。自分が泣いていることも忘れて、反射的に顔を上げた。
そこにいたのは。
「つじ、くん……?」
同じクラスの……辻くん、だ。
涙で視界がぼやけている、けど。なんとなく、つり目がちなその瞳が、驚いたようにいつもより見開かれていることがわかる。
背の高い彼をここから見上げていると、ちょっぴり首が痛い。濡れた目元を拭うことも忘れ、口を開いた。
「辻くん、どうし、たの?」
「いや、それはこっちのセリフだし」
言いながら辻くんは、廊下の隅でへたり込む私の斜め前へ、同じようにしゃがんだ。
そして視線を窓の外へ向けて、何かに気づいたように目をまたたかせてから、ああ、と納得したふうに一言。