炭酸アンチヒーロー
「わ~っ!! 危ないそこの人っ!!」

「え? ひゃあっ!?」



ぼんやり立ち尽くしていた私の耳に、突然あせり声が届いた。

その声の主を探す間もなく、自分のすぐ頭上でガシャーン!!と派手な音が響く。とっさに頭を抱え込みながら、きつく目をつぶった。

音はすぐにやんで、頭を庇う体勢のまま、そろそろと目を開けてみる。フェンスの向こうの地面に、白球が転がっているのを見つけた。

……このボールが、飛んできたの……?



「すみませんっ! 大丈夫でしたか?!」



数秒も間を置くことなく、慌ただしい足音と先ほども聞いた男の子の声が近づいてきた。

視線を上げてみると、フェンス越しに、ユニフォーム姿の男の子が私の目の前に立っている。



「あ……へーきです、ちょっとびっくりしただけで」

「本当に? はあ、良かった~……」



そう言って、安心したように眉を下げる野球部の人。

屈んでボールを拾うその姿に、どこかで見た顔だな、と考えていると。思いがけず目が合い、少しだけ身をすくめた。
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