炭酸アンチヒーロー
「金子?」

「ッ、」

「なにアレ、告白? アイツ、中井のことすきだったのか」



あーしかも、なんかあいつら両思いだったっぽい。残念だったな。


窓ごしに中庭を観察しながら、辻くんはさらりとそんなことを言う。そのおかげで、またぼろぼろと涙がこぼれてきた。

どうしよう、こんなふうに泣きたくなんてないのに、止まらない。

いや、待って、というか……もしかしてこの口ぶりだと、私が金子くんのことすきだって知ってたっぽい……?!

もしかして私、特別親しいわけでもないクラスメイトにも感づかれちゃうくらいわかりやすかったの?!

ますます心が折れてしまって、余計に涙腺が緩くなる。



「ッな、なんで辻くん、わざわざそういうこと言うの~~」

「あー、わりーわりー」

「ほ、ほんとにそう思ってるように聞こえない~~」



べそべそ言い募る私に対し、辻くんはいたって軽い調子だ。この温度差がむなしい。

ああ、なんて今の自分は情けないんだろう。やつあたり気味に辻くんの背中を軽くぱしりと叩くと、なぜか彼は「よしよし」と言いながら、私の頭を撫でた。

口調のわりに、その手は思ってたよりやさしくて。私は少し意外に思いながら、ひとつしゃくり上げる。


そういえば私、辻くんとちゃんとしゃべるのって、たぶんこれが初めてだ。

初めてがこんな状況って、正直どうなのと自分でも言いたくなるけれど……起きてしまったことは仕方ない。
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