炭酸アンチヒーロー
里見くんのセリフにいろいろ勘ぐって、心中激しく動揺する。ついでに脳内のぐるぐるしたひとりごとも増える。

そんな様子を悟られないように、私は必死で言葉を繋げた。



「えと、里見くん……も、野球部だったんだね。だからよく辻くんと話してるんだ」

「まあねぇ。一応中学からバッテリー組んでる仲でもあるし」

「え、バッテリー? ってことは……」



私の言葉を受けて、また里見くんがにっこり微笑みながらうなずく。



「うん。一応俺がピッチャーで、ヒロは正捕手なんだ」

「捕手……」



辻くん、キャッチャー、なんだ。

野球の詳しいことはよくわかんないけど……キャッチャーってピッチャーが投げたボールをただ捕るだけじゃなくて、投げる球の種類を考えたりするんだよね?

辻くん頭の回転が速そうだし、似合うかも。実際テストの成績良いんだよね。


改めて辻くんのポジションを聞いた私は、なんとなくまた、フェンスの向こうの彼を探してしまう。

だけどさっきまで辻くんがいたはずの場所には今別の人が立っていて、あれ?と思わず目を瞬かせた。

そんな私に気づいたのか、里見くんが「ああ、」とつぶやきながら同じ方向に視線を向ける。
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