炭酸アンチヒーロー
「ヒロなら、さっき監督に呼ばれてたから今ちょっとしたミーティング中だと思うよ。あいつ副部長だから」

「え、すごい」



強い部活のリーダーって、部員をまとめる素質もそうだけど、やっぱり実力もないとだめなんだよね?

反射的にこぼれ落ちた私の言葉が聞こえたのか、里見くんはまたこちらに顔を戻して……なぜか苦笑した。



「あはは、まあすごいよね。あいつ頭もキレるし統率者気質なんだけど、“長”になるのは嫌がって、昔から“副”ばっかやるんだよ。完全に責任を被ることになる役職はやらないで、影の支配者になるっていう……」

「わああ……つ、つまり魔王なんだね……」

「ぶはっ、魔王!? いいねそれ~!!」



ついポロリと口から漏れた私のセリフがツボに入ったのか、思いきり吹き出したあげく、おなかを抱えてケラケラ笑う里見くん。

な、なんかそんなに笑われると、逆に恥ずかしいんですが……。



「あははははっ! ……はあ~、いいこと聞いた~」



ようやくおさまったらしく、里見くんが大きく息を吐く。

彼にとっては『いいこと』だったみたいだけど、こちらとしては盛大な失言だ。私は若干慌てながら釘を刺す。



「さ、里見くん! さっきの言葉は、辻くんにはどうか内密に……!」

「ふふ、わかってるよ。にしても、ヒロが魔王って……ぶっ、似合いすぎ」
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