炭酸アンチヒーロー
「(……私、サイテーだ……)」
逃げ出した理由。あのとき辻くんにああ言われて恥ずかしくなったっていうのは、嘘じゃない。
けど、それと同時に──……なんだか少し、こわくなったの。
あんな言葉をもらって。あの印象的な鋭い目で、見つめられて。
流されそうになってしまう自分がこわくて、……許せなかった。
だから去り際に、普段なら絶対に言えないような、あんな強気なセリフが出てきたのかもしれない。
そうこう考え事をしているうちに、気づくと自分のクラスである3年8組の教室の前にたどり着いていた。
中にはもう誰も残っていないらしい。ドアについたすりガラスの窓で、室内の電気がめずらしくすでに消えていることが確認できた。
誰かいるところに、取りに入るのも間抜けだけど……もう空っぽになった教室に戻るっていうのも、それはそれで虚しいなあ……。
無意識にため息をついて、ドアをスライドさせる。
「──ッえ」
電気が点いていない、イコール、人がいない。
頭の中でそう考えていた私はドアを開けた瞬間に見えた人影に驚き、びくりと肩をはねさせた。
そして窓の外を見ていたその人が、ドアの音に反応したのかゆっくりとこちらを振り返って。
今度は心臓の音が、一際大きく鳴った気がした。
逃げ出した理由。あのとき辻くんにああ言われて恥ずかしくなったっていうのは、嘘じゃない。
けど、それと同時に──……なんだか少し、こわくなったの。
あんな言葉をもらって。あの印象的な鋭い目で、見つめられて。
流されそうになってしまう自分がこわくて、……許せなかった。
だから去り際に、普段なら絶対に言えないような、あんな強気なセリフが出てきたのかもしれない。
そうこう考え事をしているうちに、気づくと自分のクラスである3年8組の教室の前にたどり着いていた。
中にはもう誰も残っていないらしい。ドアについたすりガラスの窓で、室内の電気がめずらしくすでに消えていることが確認できた。
誰かいるところに、取りに入るのも間抜けだけど……もう空っぽになった教室に戻るっていうのも、それはそれで虚しいなあ……。
無意識にため息をついて、ドアをスライドさせる。
「──ッえ」
電気が点いていない、イコール、人がいない。
頭の中でそう考えていた私はドアを開けた瞬間に見えた人影に驚き、びくりと肩をはねさせた。
そして窓の外を見ていたその人が、ドアの音に反応したのかゆっくりとこちらを振り返って。
今度は心臓の音が、一際大きく鳴った気がした。