炭酸アンチヒーロー
「あの、なんか、機械を使って打つ練習してるときとか」

「………」

「飛んで来てるのすっごく速いボールなのに、カキーンっていい音たてながら遠くまで打った瞬間とか」

「ッ蓮見、もういいから」



早口でまくしたてていたら、少し強めの口調で話を遮られる。

う、何か気にさわったかな……?

心配になった私は、顔を上げて──思わず目を丸くした。


だって、見上げた辻くんは右手で口元を隠して、気まずそうにそっぽを向いていて。

でも顔の隠しきれてない部分が、少し赤くなっていて。

怒っているというより、その様子は、どちらかと言えば……。



「辻くん……?」

「ッ、……あんまこっち見んな」



視線を外したまま、ボソリと彼がつぶやいた。

私はといえば内心大げさなくらい驚いて、辻くんのことをまじまじと見つめてしまう。

え、え。

あの辻くんが。同じクラスで、ちょっと無愛想な辻くんが。

……今私の目の前で、照れてる……?!
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