炭酸アンチヒーロー
なぜかやたらと目が合って、けれどもすぐにまた、勢いよく逸らされてしまう。

そんな彼女は、誰の目にも明らかに挙動不審で。現に朝から何度も、周りの奴らに不思議そうな顔を向けられていた。

そして当の本人にそんな気はないのかもしれないが、されてるこちらとしては面白いものではない。非常に。



「(やっぱ昨日のアレが原因だよな、確実に)」



昨日のアレ──放課後部活を早抜けした俺が教室にいたところへ蓮見がやってきて、なんだかんだでなぜか俺は彼女に頭を撫でられて。

その後どもりながらほめられたかと思えば、訳がわからないでいるうち逃げるように教室からいなくなった──という、俺にとってはなんとも戸惑ってしまう出来事。

廊下を歩きながらそのことを思い出して、また、自然と心が重くなる。

何せ、よりによって自分のすきな奴に、監督から早退を命じられた後の情けない姿を見られたのだ。

さすがに理由までは言えなかったが、それを彼女に話したのは、まぎれもなくあのときの自分自身。けれどもやはり後から思い返して、後悔にも似た気持ちになってしまう。


幻滅……されていたら、どうすればいい。

蓮見はフォローしてくれたけど、元から良くもないだろう俺の印象が、アレでさらに低迷した気がする。まったくもって笑えない。

というかまさか自分が、色恋事ひとつで部活への集中力をなくしてしまうとは。そんなにへタレた性格だったなんて、思ってもみなかった。

これじゃあ、付き合うまでいろいろグダグダやってた悠介と汐谷のことも、とやかく言えないじゃねぇか。ダサすぎる。
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