炭酸アンチヒーロー
・「自分に影響を与える人ってことかな」
お弁当を食べ終えた昼休み。斜め読みしていた雑誌から顔を上げた沙頼が、不意にポツリとつぶやいた。
「最近さー、なんかまおおかしくない?」
「えっ!? な、なんのことにょろ!?」
「にょろって何……」
思いっきり呆れた目で見られる。うん、勝手に出てきたので自分でもよくわかりません。
恥ずかしい失言を誤魔化したくて、私はずずっと手元のいちごオレをストローで吸い込んだ。
左隣に立つ佳柄が、不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「でもたしかにはすみん、最近ちょっとキョドーフシンにょろだよ?」
「佳柄、もうにょろはいいから……」
「……挙動不審……」
そ、そんなふうに見えてたんだ……。
ちょっぴりショックを受けつつ、それでも私は、あくまで理由は言わない。
……“言わない”じゃなくて、“言えない”の方が正しいのかもしれないけど。
そうして頭の中を駆け巡るのは、数日前の……学校から帰る途中にあった、あの出来事だ。