WANTED ~何故か隣国で指名手配されていたので、乗り込んでみました~ (平行世界)
 門前払いされたらどうしよう…今更ラミーノアさんに来てもらえば良かったかな、などと不安に思っていると、腰に剣を携えた赤紫の騎士の制服を着た者が現れた。
「近衛騎士のフェリエス=ロファソムです。案内いたします」
 訓練された無駄のない動きで促すと、先に歩き始める。
 アルカディアも慌てて後をついていった。
 廊下の壁などにも高価そうな絵画や芸術品が並べられている。さすが安定している大国だ。見る物すべてが細やかで美しい。
 長い回廊を渡った先の宮殿の入口で、近衛騎士は足を止めてアルカディアに先へ進むよう促した。
 もうすぐ、事実が判るのだ。
 はやる気持ちを押さえ、連れて来られた宮殿の広い広間へと足を踏みいれた。
 中には青年がひとり、彼女の到着を待っていた。
 近衛騎士は一礼するとすぐに下がって入口の警備に就く。
 静かな空間に緊張するなと言う方が無理だ。
「お待ちしておりました。アルカディア=リーマ様」
 彼女の姿を見て、笑みを浮かべた青年だったが、その声に聞き覚えがあった。
「えーっと…もしかして、男たちから助けてくれた方ですか?」
「私はケーノサ=メルキーヴァと申します。今、病状で臥せっておりますカルマキル国の王子の傍に、仕えさせていただいてます」
「王子?」
「はい。貴女に会わせたい方がいるのですが、ついて来ていただけますか?」
 優しい笑みを浮かべ、ケーノサは彼女を連れて宮殿の奥へと案内して行く。
「えっと…すみません。もしかして探していた〝アルカディア〟って本当に私なんですか?」
「名前だけを頼りに、探していたのですが、事情を知らない臣下の者が賞金まで付けて探し出そうとしまして……」
「……えっ? てちょっと待って」
「はい?」
 にっこりと邪気のない笑顔を見せるが…あまりにもキレイな笑顔に逆に確信できる。
「もしかして、あんなに追いかけられた元凶?」
 それはそもそもの元凶である人に助けられて感謝していたということか?
「直接とは言いませんが、無関係ではないことは認めます」
 笑みを消した真剣な表情。
「どうしても貴女を探し出さなければならない、理由がありましたので」
 立ち止ったのはひとつのドアの前。
 コンコンっと扉をノックして、その大きな扉を開けた。
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