WANTED ~何故か隣国で指名手配されていたので、乗り込んでみました~ (平行世界)
1 テニトラニス 港町
アルカディアは建物から溢れる光を頼りに、薄暗い路地を家へと急いでいた。
街の酒場には仕事帰りの人々が溢れ、酔っ払った人が道端で寝転んでいる。
昼間とは全く違う賑わいがあった。
仕事の届けもので遅くなってしまった。
十年前に両親が亡くなり、父の姉である伯母に引き取られて育ててくれた。
ずっとお世話になっているのは心苦しいと、親譲りの手先の器用さを最大に利用して、手作りの針金細工の装飾品を作り始めたのが2年前。
最近では街の雑貨屋などの商品の受注も増え、ちょっと軌道に乗ってきたところだ。
でき上がった髪飾りや首飾りを届け終えると日はすっかり暮れてしまっていた。
ここは商業の国・テニトラニスの港町。
北陸の南に位置する小さな国ではあるが、港は北と南の大陸の航路がつながれていて、定期船・商業船の往来が盛んで、発展している国だ。
港町には毎日いろんな国の人が集まりにぎわっている。
夜はガラの悪い連中がいるから、ひとりで歩くんじゃないよ、と伯母に注意されていたのだが、仕事だから仕方ない。
アルカディアは家へと急いだ。
「よぉ、ねーちゃん。こんな所に一人でいないで、我らに付き合えや」
酔っ払った4人の男達の横を通りすぎる時に突然声をかけられ、腕をつかまれる。
言葉の感じから地元の者ではなく、南大陸から海を渡ってやって来た者らしい。
「そんな暇ないよ」
つかんで来た手を払いのける。
商売上、酔っ払い相手には毅然とした態度で対応するようしつけられている。
「なにをぉ~」
酒に酔って気が短いのか、断られた事で更にしつこくからんでくる。
「ちょっとくらい相手してくれよー」
「もっと色気のある方がいいけどなぁ」
わははははと品のない笑い声を路肩で響かせる。
「お、なんだお前たち、その娘、アルカディアを知らんのか?」
そんな様子を見ていた露店の男が話しかけてくる。
「前回の剣術試合。いやぁ、アレは見事なモノだったよ」
うんうんと一人頷きながら思い出すように納得してる。
小さな町主催の剣術大会だが、珍しく女性も参加できるというので周辺地域からの人が集まってくる。
その大会に出場したアルカディアは、優勝は無理だったものの入賞を果たし、順位では女性として一番だったのだ。
露天商の言葉を聞いた男達は、酔いが覚めたような驚いた顔。
そして、
「"アルカディア"?」
と、同時に呟いた。
「そうだ、彼女は港町の女性の中で一番強いんだよ」
露天商の男が自分のことのように嬉しそうに宣言するのをアルカディアは愛想笑いで受け流す。
男たちから守ってくれようとしていることには違いないから。
しかし、酔っ払いの男達が先ほどと違った態度でコソコソ話している。
「へぇ、こんな所にもいたか」
「年も合ってるようだしな…」
「確か、カルマキルの王宮に連れて行けば、金100万ゴールド……」
『?』
言っている意味が判らない。
ちらりと視線を寄こす男達の目付きが変わっている。
人数は4人。それも大人。
男と女では力の差は大きい。
腰には護衛用なのか、剣を持っている。
「なあ、ねえちゃん、ちょっと話が…」
彼女に近付いてくる彼らに危険を感じて、アルカディアは一気に走り出した。
「逃がすな!」
と、誰かが叫ぶと共に一斉に4人が追いかけて来た。
街の酒場には仕事帰りの人々が溢れ、酔っ払った人が道端で寝転んでいる。
昼間とは全く違う賑わいがあった。
仕事の届けもので遅くなってしまった。
十年前に両親が亡くなり、父の姉である伯母に引き取られて育ててくれた。
ずっとお世話になっているのは心苦しいと、親譲りの手先の器用さを最大に利用して、手作りの針金細工の装飾品を作り始めたのが2年前。
最近では街の雑貨屋などの商品の受注も増え、ちょっと軌道に乗ってきたところだ。
でき上がった髪飾りや首飾りを届け終えると日はすっかり暮れてしまっていた。
ここは商業の国・テニトラニスの港町。
北陸の南に位置する小さな国ではあるが、港は北と南の大陸の航路がつながれていて、定期船・商業船の往来が盛んで、発展している国だ。
港町には毎日いろんな国の人が集まりにぎわっている。
夜はガラの悪い連中がいるから、ひとりで歩くんじゃないよ、と伯母に注意されていたのだが、仕事だから仕方ない。
アルカディアは家へと急いだ。
「よぉ、ねーちゃん。こんな所に一人でいないで、我らに付き合えや」
酔っ払った4人の男達の横を通りすぎる時に突然声をかけられ、腕をつかまれる。
言葉の感じから地元の者ではなく、南大陸から海を渡ってやって来た者らしい。
「そんな暇ないよ」
つかんで来た手を払いのける。
商売上、酔っ払い相手には毅然とした態度で対応するようしつけられている。
「なにをぉ~」
酒に酔って気が短いのか、断られた事で更にしつこくからんでくる。
「ちょっとくらい相手してくれよー」
「もっと色気のある方がいいけどなぁ」
わははははと品のない笑い声を路肩で響かせる。
「お、なんだお前たち、その娘、アルカディアを知らんのか?」
そんな様子を見ていた露店の男が話しかけてくる。
「前回の剣術試合。いやぁ、アレは見事なモノだったよ」
うんうんと一人頷きながら思い出すように納得してる。
小さな町主催の剣術大会だが、珍しく女性も参加できるというので周辺地域からの人が集まってくる。
その大会に出場したアルカディアは、優勝は無理だったものの入賞を果たし、順位では女性として一番だったのだ。
露天商の言葉を聞いた男達は、酔いが覚めたような驚いた顔。
そして、
「"アルカディア"?」
と、同時に呟いた。
「そうだ、彼女は港町の女性の中で一番強いんだよ」
露天商の男が自分のことのように嬉しそうに宣言するのをアルカディアは愛想笑いで受け流す。
男たちから守ってくれようとしていることには違いないから。
しかし、酔っ払いの男達が先ほどと違った態度でコソコソ話している。
「へぇ、こんな所にもいたか」
「年も合ってるようだしな…」
「確か、カルマキルの王宮に連れて行けば、金100万ゴールド……」
『?』
言っている意味が判らない。
ちらりと視線を寄こす男達の目付きが変わっている。
人数は4人。それも大人。
男と女では力の差は大きい。
腰には護衛用なのか、剣を持っている。
「なあ、ねえちゃん、ちょっと話が…」
彼女に近付いてくる彼らに危険を感じて、アルカディアは一気に走り出した。
「逃がすな!」
と、誰かが叫ぶと共に一斉に4人が追いかけて来た。