白のアリア
 のぞき込むとクルスが懸命に庭仕事をしていた。
 庭園には雪が積もっていて、かなり寒いだろうに
薄着で1人モクモクと花を植えている。
「あんた何してんの!風邪ひくわよ!」

 アリアが叫ぶと、クルスはアリアを見上げて笑った。
「この花は冬に咲くんだ。結婚式に、アリアにあげようと思ってさ〜」

 馬鹿じゃないの?

 アリアはこの婚姻をあまり喜んでない。なのに……。
クルスはアリアを愛そうとしている。そう思うとアリアの胸が熱くなる。
 今までそこまでアリアを思ってくれた人がはたして
いただろうか。

 アリアは自分のストールを庭園のクルスへと投げつけた。
「ふん!」

 アリアなりの優しさだ。
 クルスをそれを肩に巻くと、嬉しそうにまた笑った。

「くしゅん!」
 
 アリアがくしゃみをすると、アルバートは慌てて
自分のマントをアリアにかけた。
 そしてさっきの話を続ける。

「クルスを国中に花を植えて回ったんです。
時には罵声を浴び、石を投げられながら……  
そんなクルスを見て、何かを感じる者もいたのでしょうね。いつの間にかクルスの周りには人が少しづつ
集まっていたのです」

 そしてアルバートはアリアに深々と頭を下げた。 

「どうかアリア姫もクルスを理解して欲しい。
そして愛してもらえないだろうか?」
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