白のアリア
 アリアが部屋から出てくると、クルスは思いっきりアリアを抱きしめる。
 
「えっ?えっ?」

 突然の事にアリアが戸惑ってしまった。てっきり怒ってると思ったからだ。

しかしクルスはアリアの瞳をじっと見つめる。
そしてこう言った。

「アリア悔しい?」

「悔しいにきまってじゃない!」

 アリアは頬を真っ赤にさせて答える。そして思った。何も知らないくせにと。母親の身分の低いアリアがどんなに苦労して生きてきたか知らないくせにと。

「だったらそんな顔をしてちゃだめだよ。
妹姫より絶対絶対幸せにならないとだめだよ!」

 はあ?アリアはクルスの言葉の意味が分からない。だってもうアリアの負けは決まっているのに、これ以上どうしろと言うのだ。

「ここで幸せになるのを諦めたら、今まで頑張ってきた小さなアリアが可哀相だよ」

 小さな自分が……?

 ふと自分の後ろに幼い頃、蔑まれて泣いていた小さな
アリアがいるようなそんな気がした。
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