白のアリア
 城を出る一周間前に突然母が亡くなった。あまりに突然でアリアは信じられなかった。だって昨日まで元気に微笑んでいたのに……!

 母の葬儀は簡素なもので、アリアはただ呆然と母の棺が土に埋められるのを眺めていた。涙さえ出ない。

 人々はこの先のアリアのみの振り方を噂するが、アリアはその時は考えられなかった。

 城の回廊で一人うずくまって、やっとアリアは泣くことが出来た。一人、うわーん
うわーん泣いた。

「アリア姫」

 そんなアリアに声をかけたのは、リディアづきの家庭教師だった。敵対する立場だったが、彼はアリアにも礼節を忘れなかった。
 
「シュトラール……」

「この度は大変でしたね。心中お察しいたします」

「社交辞令はいいわ……何よ?」

 シュトラールは苦笑いすると、これからどうするのか尋ねたので、アリアは
母の生家に身を寄せるつもりだと笑った。
 
 シュトラールはそうですか……と少し考えたような様子だった。そして言った。

「アリア姫はリディア姫より頭がいいです。
だからその方がいいでしょう。
忘れた方がいい、母君が暗殺されたことなど」

 アリアの目の前が真っ黒になる、そして赤く燃え上がる。

 あ……暗殺?

 アリアは知らなかった。シュトラールは
それではご機嫌ようと言い残し
去っていく。

 アリアの心にシュトラールの言葉が何度も反芻する。
 
 母は暗殺されたのだ。
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