間違った恋

あの封筒を菊組に送ってから数時間後。

私は自分のバカさに呆れていた。

「お金入れ忘れるなんて…」

大事な大事な1万円札を入れ忘れていたことに気がついたのは学校が終わった数時間後のことだった。

あれ程大騒ぎした1万円札は今私の手元にある。

…しかも1万円札はコンビニでチョコを買ったせいで9807円に砕けていた。

自室に籠りどうしようかと悩んでいると母さんが仕事から帰ってきた。

「沙耶ーちょっと来てー」

玄関から私を呼ぶ声が聞こえ、自室から出てみると。

「…なにこれ」

「思いからそっち持って!!」

「う、うん」

母さんは玄関で重たい荷物を重そうに持ち上げると片方を私に持つように言ってきた。

「重っ!何これ」

大きな荷物はダンボールに包まれていて中身は分からなかった。

「あんた宛に荷物らしいけど」

「はぁ!?」

私通販でもこんなの頼んでないんですけど。

せいぜい服くらいよ。

とりあえずダンボールのガムテープを取り中身を覗いてみた。

「……なに」

綺麗に包まれたダンボールの中身には大量のコスメやネイルセットが入っていた。

いやいやいや、このコスメブランドの高いやつじゃん!!

私ら学生のお小遣いじゃどう頑張っても買えないやつ!!

一体誰が…

思い当たる節はない事はない。

「母さん、これ郵送するからコンビニまで一緒に持って行って」

「母さん疲れてるのよー」

「ごめんって、行こうよ」

仕事で疲れている母さんを引っ張って、ダンボールを一緒にコンビニまで持って言った。

コンビニで郵送してもらった。

忘れずにちゃんとダンボールの中に茶封筒を入れ、きちんとお金を入れた。

9807円を。
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