間違った恋
「……っているわけないよね」
まさかね、と思いカーテンを閉めようと思ったその時だった。
黒塗りの高級車がアパートの前に止まった。
ははは…
まさか。
そんなはずないじゃん?
来るわけないじゃん?
そう思ってカーテンをシャっと閉めた。
これは夢。
そう夢。
私眠ってるんだわ。
そういえばちょっと最近疲れ気味だったし。
疲労が溜まって幻覚が見えてるんだよ。
大丈夫大丈夫。
大丈夫…だよね?
『どうしたの?』
「ヤバイよ。家の外に若頭来ちゃったよ』
『だからあれ程言ったじゃん!』
「そうなんだけど…」
泣きそうになりながらリカコに縋った。
こんな時に頼れるのってリカコしかいないんだもん。
『家の外にいんの?』
若頭、そう付け足すリカコ。
「うん。車にもたれかかって私の家見上げてる…」
もうカーテン開けれないってリカコに泣いて縋れば明日の朝までそのままでいなさいって命令口調で言われた。
『ヤクザは一般人には手出せないの。だから朝まで絶対に外出るんじゃないの。明日朝一で迎えに行くから。それまで自宅待機。』
わかった?と小学校の先生が生徒をあやすように優しいリカコにガチの涙が出てきた。