間違った恋
「はい」
真正面に座る若を見ると、
「髪」
そう一言言われた。
「髪…ですか?」
髪がどうしたんだよ。
痛みが凄いとか?
「妹が怖がるんだよ、その色」
「…はあ。」
何だよ、つまり染めてこいと?
髪を黒くしてこいと?
学校の実習でもないのに?
「真っ黒とまでは言わねえが暗めの茶色にしてこい」
「………」
えぇー。
この色なかなか気に入ってたのに。
ミディアムの長さでアッシュグレーにしているこの髪はかなり自分的に気に入っている。
なのに染め直せと…
だが背に腹は変えられん。
「努力しまーす」
明日でも染めに行くか。
バイト代の方が儲かると考えると納得ができる。
「うちは手渡しだ、無駄遣いすんなよ」
「はーい」
父さんか!!
っていっても私父親いた記憶ないけど。
暫く(ほんのちょっと)若と話していたら車をビルの下に持ってきた遊佐さんが呼びにきてくれた。
「じゃあ行こうか」
「あ、はい。…でもリカコは」
ソファに眠っているリカコをチラッと見るとそれに気づいた遊佐さんはよっこらせとジジくさい言葉とともにリカコをお姫様抱っこして車まで運んでくれた。
それに続くように私も遊佐さんの後を追ったが、扉の前で若に一礼してからビルの下に停めてあった車に乗り込んだ。