間違った恋

そう言って長ソファの真ん中に私を座らせた遊佐さんは仕事の内容を説明してくれた。

「一応確認だけど、土日は朝から夜まで働けるんだよね?」

「はい」

「平日は?」

「火、水、金で入れますよ」

その3日間は学校終わるの早いし。

「平日は大体書類整理と電話でアポ取る事なんだけど…」

電話?

あ、秘書の仕事的な?

「まあ電話は滅多に掛かってこないから安心して」

安心するも何も、まだ安心する段階まで仕事してないから。

「土日はアツシの妹のお世話ね。最初は大変だろうから牧生も一緒にしてくれるから」

そういえば若の妹さんっていくつなんだろう。

手が掛かるってことはまだ小さいのかな?

「妹さんいくつですか?」

「多分19」

多分19って。

私と同い年じゃん。

「仲良くなれますかねー」

私こんな見た目じゃん?

いや、でも私髪染め直したし。

怖がられないかな。

若が最初にその髪色は妹が怖がるとか言ってたからな…

「今日の仕事はこの書類とこの書類とあと、この黄色い紙をホッチキスで止めて欲しいんだ」

「3枚セットですか?」

「そうそう、黄色い紙が一番上にくるようにしてね」

目の前にドッサリと置かれた紙の束。

これよく漫画で見るやつじゃん。

書類山積み。

「何部作るんですか?」

「んー…200くらい」

「………」

いや、多すぎるでしょ。

一体どこにこんな紙配って歩くつもりだよ。

「ゆっくりで大丈夫だよ。牧生もいるし」

ねー牧生?なんて可愛く藤間に話しかける遊佐さんは扉付近に置かれている棚を漁った。

「その書類は明後日までに終わらせてくれたらいいから。最初はこれから慣れようね」

ニコッと笑い私の手にホッチキスを握りしめさせた遊佐さんはどこかに電話を掛けて事務所から出て行ってしまった。
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