間違った恋
そうなれば残るは当然の如く私と藤間だけで…
「あの…」
「さっさと終わらすぞ」
「…はい」
怖すぎてチキンな私は藤間に従う事しか出来なかった。
パチンパチンと部屋に響くホッチキスの音。
会話はなく、ただひたすら書類をホッチキスで止めていくだけの作業に飽きていた頃不意に来客が訪れた。
事務所自体は狭くもなく、広くもなく。
例えるなら○利探偵事務所までみたいな感じかな。
部屋の間取りも家具の位置も。
私からしたら扉は背中を向けていて後ろが見えないから来客が来たことにすら気づいていなかったんだが、藤間の「お疲れ様です」そう発した声であ、誰かいるんだってわかったのだ。
そーっと後ろを振り向くと見知らぬ女の人。
すっごく綺麗な女の人は私を見るとニコッと笑って微笑んだ。
ベージュのセーターにストライプのスキニーなのに何故かボーイッシュさはなく、セミロングの茶色い柔らかそうな髪を緩く巻いているからかゆるふわ系女子って言葉が彼女にはピッタリだった。
「初めまして、新しいバイトの子?」
発せられた声は透き通った綺麗な声で優しい雰囲気の彼女は目の前に手を差し出して来た。
「わたし遥って言うの。あなたは?」
「中野沙耶…です」
差し出がましいかその手を握り返した。
小さくて女の子らしい感じの手で、彼女からは石鹸の匂いがした。
世の中こういう女がモテるんだろうなー。
「沙耶ちゃん?可愛い名前だね」
いえ、あなたが可愛いです。
「遥さん、若ならまだ仕事で…」
「いいの、この書類持ってきただけだから」
そう言って薄ピンクの大きめなカバンからファイルに入っている書類を出した遥さん。