間違った恋

「ここに名前と捺印お願い。あと父から伝言で来週の会合は19時からだって」

書類を藤間に手渡し、何か大事なこと?を話している藤間と遥さんをよそに私はソファに座り直しホッチキスで書類を閉じた。

大事な話なら聞かないほうがいいし。

ってか本当に遥さん可愛いなおい。

ふんわりと笑う彼女は良いとこ育ちのお嬢様って感じで、とてもじゃないけどこんな薄汚いビルに入ってくるような人には見えない。

「なら牧生お願いね。じゃあね沙耶ちゃん」

要件が終わったのか帰ろうとする遥さんを引き止めた藤間。

「若が戻られました」

そう言われてみれば外が何やら騒がしいような気もするような…

車の音が止まってから2、3分すると戻ってきた若と遊佐さん。

「遥ちゃん来てたんだ」

スーツのネクタイを緩めながらソファにどさりと座り込んだ遊佐さんにどこから出したのか遥さんは缶コーヒーを机に置いた。

「もう!アツシも遊佐も本部に寄らないから私が来たんじゃない!」

「ごめんごめん。最近忙しくて本部に顔出し出来てなかったんだ」

「そんなこと言って遊佐は女でしょ!?アツシは電話しても素っ気ないし…」

可愛い顔して怒る遥さんを宥める遊佐さんは苦笑いだった。

ってか女優先って…

アツシさんは○利小五郎がいつも座っている自分専用らしいデスクに腰掛けて遥さんが遊佐さんのために置いた缶コーヒーを勝手に飲んでいた。

「もうアツシだめだって!それは遊佐の!」

「良いよ良いよ、アツシってば遥ちゃんの事大好きだから。俺だけ貰ってアツシのはなかったから拗ねてるんだよ」
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