たった一度のモテ期なら。




同期の半分には一応内緒にしていたはずのお付き合いは、1カ月ほどであっという間にばれた。

同期飲みの最中に、私の斜め後ろに立っていた西山がうっかり「奈緒、それ取って」と言ったのだ。

テーブルを囲む8人が、一瞬しんとした。

「奈緒?」

「うるせえ、お前が言うな」

わざと突っ込んだ原ちゃんに、西山が逆切れする。

「なんだよ、いつのまに?」

「原ちゃんそれ知ってたんだろ!」

とワーワーひとしきり騒いだだけで、別に隠さなくちゃいけない事情があるわけでもないし、同期にぐらい言えよとその場はおさまった。

「まあでも、社内の子は女に見えないっていう西山が?」

「影森ちゃんが彼氏と別れた途端に手の平を返すっていう」

「ていうか、俺らをけん制してただけなんだろ?」

「できる男は手段を選ばないんだよな、西山」

抜群のチームワークで次々に突っ込まれても、いつになく何も言い返さずに目をそらして「そうだよ」とやり過ごしている。

「で、影森。どうなの、西山は彼氏として」

「おい」

「お前に今発言権はないぞ」

つまらないのか矛先がこちらに来てしまった。そして西山は黙らされている。


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