たった一度のモテ期なら。
帰り道、なんとなくみんなの後ろから2人でついて歩く。本社に行っちゃったら同期飲みもしにくくなっちゃうかなぁ。

「別に帰りにこっち来るぐらい余裕だろ」

「なんで考えてることわかったの?」

「奈緒の考えは深読みしなくていいって気づいたから」

そうなの? 私も西山の気持ちに不安になったりはしてないけど、考えてることはまだよくわからない。今日もバレちゃったけど、気にしてないみたいだし。


「ちょっと、そこのやきもちやき」

戻ってきた綾香が声をかけてくる。ダメダメ、本人にそんなこと言わないで!

「わざとらしくバラしてんじゃないわよ、バカ」

「ああ、わかった?」

「余計な虫には女の子紹介しておくから、安心しなさいよ」

「頼りにしてるよ、ねえさん」

「誰がねえさんよ?」

でも確かに姉御っぽくふっと笑って、「原ちゃん、もう一軒行こうよー」と綾香は前に向かって声を上げた。

行くやつ誰だ、明日休みだし全員行くか、と大声で仕切る原ちゃんの声はここまで聞こえる。

「綾香ってね、原ちゃんが私に気があるとまだ思い込んでるかも。かわいそうだよね、原ちゃん」

「別にかわいそうじゃないからほっとけ」

「はーい」

今のはちょっとわざとです。やきもちやいてるみたいなの、ちょっと嬉しいから原ちゃんの話題を出してみたの。

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