たった一度のモテ期なら。
冬の刺すように冷たい空気の道路に先に出て2人を待つけど、ガラス戸の向こう側の会計付近でごちゃごちゃやってて出て来ない。寒いんですけど!

待ちきれずにドアを押し開けると、まだ何か言い合っている。

「だから今日はいいって」

「なんでよ、お膳立てされたチャンスなんてそんなにないよ?」

なんの話かな。仕事でもみんなとあまり接点ないし、私だけ話がわからないのも時々あるからしかたないけど。

「どうしたの?大丈夫?」

やっと出てきたところに声を掛ける。

「奈緒、私さ」

と何か言おうとした綾香の声をかき消すように「西山!」と原ちゃんの大声が響いた。

パッと振り向くと、西山と女の子が少し離れたところからこちらを見たところだった。驚いた顔で、女の子を置いたまま歩いて来る。

「何やってんの、こんなとこで」

「そっちこそ何?新しい彼女?」

私もちらりと思ったことを綾香はためらわずズバッと聞く。

「いや、大学の友達。3人だけ?」

「原ちゃんと直帰なの。来てくれたのが奈緒だけってところ。西山携帯見てないでしょ」

「悪い。いつものとこかと思って見なかった」

綾香と素早く情報交換してる西山に、原ちゃんが「店変えようと思って。合流しないか?友達も一緒に」と誘う。

「このヘタレ」

と綾香が怒ったように呟くけど、西山はそれを聞き流したのか「いいよ。原ちゃんと行ったことあるバー行くところ」と言った。

「ニシ、友達?」

連れの女の子とは違う子が走り寄ってきて、瞬く間に合流が決まった。
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