たった一度のモテ期なら。

「俺こっち混ざっていい?あいつら飲みペース早いんだよね」

ひとしきり笑い終わった女子の方に入ってきた小林くんという人は、初対面でも警戒心を抱かせないニコニコした人だった。

「コバはスポーツわかんないから逃げてきただけでしょ」

「俺は文化系だからさ。ていうか原ちゃん、ニシ並みの知識で怖い」

「原ちゃんは西山の弟子だから」

ここは私が答えた。原ちゃんはとにかく西山が好きで、昔は西山と付き合ってるとか言われていた。3年も経って、今はさすがにそこまで一緒にいないようだけど。

小林くんは私に向き合い、あっちを咎めるように指差す。

「奈緒ちゃんだったよね。あのノリついていけるの?」

「ちょっとはわかるようになったけど、西山に近づくと原ちゃんに怒られるから」

笑って答えて、その後こっちのテーブルはなぜか好きな映画や俳優の話に花が咲いた。

「コバ、スポーツバーでも映画談義かよ」

西山が向こうのテーブルから呆れたように突っ込んで、「そういや影森も好きだよな」と急に気づいたように言った。

あっちこっちで話が飛び交い、思いがけず楽しい夜だった。

同期で集まるのも楽しいけど、仕事の話じゃないこんなのもいいなって。私だけ少し置いてかれる感がないからかもしれなかった。

< 13 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop