たった一度のモテ期なら。
「小林と映画行こうって話してた?」

気まずく歩き出しながら、西山がつながっているのかどうか微妙な質問をしてくる。

「言ってた単館上映始まったからどうかって聞かれたけど、どうする?」

「行きたい。いつ? 今週末?」

一応話をそらしてくれているようなので、ありがたく乗った。

「そこまで知るかよ。連絡させていい?」

「うん、いいけど」

「もう遅れるぞ、走れ」

言うなり西山のペースが上がった。

小林くんから連絡してもらう必要がよくわからなかったけれど、とりあえず私も小走りで会社に向かった。結局西山は横で「がんばれよ」と声をかけつつ早歩きのままだったけど。



サブバッグはデスクの引き出しの奥に厳重にしまって、スクールのパンフは後でこっそり会社封筒にでも入れようと考える。

見られたのが西山でよかった。変にからかったりみんなに言いふらしたりはしないはず。

でも経理のくせに夢見てるなあと思われただろうな。



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