たった一度のモテ期なら。
土曜の朝、正直に言えばまだベッドで温まっていたい寒さを振り切って、待ち合わせ場所に向かう。
チケット取りの列はもうできていて、小林くんは先に並んでおくからと言ってくれていた。でも顔をよく覚えていないので、服装を聞いておけばよかったかな。
「奈緒ちゃん!」
キョロキョロしている私を向こうから見つけてくれてホッとする。
「ミキマコ来れなくなっちゃってさ、ごめんね。でも二人なら席取るのも簡単だから」
最初に説明されて「そうなんだ」と言うしかなかった。気を遣って一生懸命話しかけてはくれるけれど、ほぼ知らない人と2人で映画という微妙な状況にどうしても居心地は悪かった。
別に今日でなくてもよかったし、人が減ったなら綾香を誘ってもよかったのにな、なんて考えたけれど。
あんまり気が利かない人なんだろう。
人のことを言えない私としては、きっとこう思われちゃうこと自分もあるんだろうなって同病相憐れむ気持ちだ。