たった一度のモテ期なら。
国際映画祭で賞を取ったという映画は、いい映画なんだろうとは思ったけれど私の好みではなかった。テンポが速いのはいいんだけど、音楽がうるさかったり、怒鳴っているようなシーンが続いてちょっと疲れる。
率直な感想が聞きたいと言ってくれた小林くんに言葉を選びつつそう話すと、気を悪くせず笑ってくれた。
「俺は結構好きだったけど、人を選ぶ感じはするよね。スピード感はいいってのもわかるよ」
「ケチつけてごめんね」
「ぜんぜん、謝るところじゃないでしょ。また面白そうなのあったら誘うから付き合ってよ」
別に断る理由もないから頷く。
映画見てランチ食べてってデートみたいな気がするけれど、映画ファン同士なら普通なのかなこういうの。
私そこまでコアな映画ファンでもないんだけどなぁ。西山が何か言ったのかもしれないな。
「西山とは一緒に見たりしないの?」
「あいつは意外と数は見てるんだけど、だいたい彼女とだからハリウッド大作とかラブストーリーとかそんなのなんだよね」
そうか、デートだったらそういう一般的な映画を見るのか。だから今日のは違うんだな、となんとなくすっきりする。