たった一度のモテ期なら。


「冗談でも光栄です」

「うん、さすがに冗談だけど。たまにはこっちに顔出したかっただけ」

つまらない私の答えにも気を悪くしない柔らかな微笑。女慣れってこういうのを言うんだと脳内にメモする。

「でも俺結構人気あるって聞いてたのに、そんな顔されると傷つくな。彼氏がそんなにいい?」

彼氏はもういませんけど、って主張することもないか。

「あいつも今はいいけどね、あの環境にいたらきっとそのうち腐るよ」

「はい?」

「希望の星なんだっけ? ネーミングセンスが圧倒的にないのが欠点かな、君たちの会社は」

「……西山のことですか?」

「そう、君の彼氏の西山くん」

「ただの同期ですけど?」

楽しそうな様子はからかわれているのか本気で言ってるのかわからず、つい怪訝な顔になる。



彼女っぽく見えるわけないけど。チョコあげてるところ? あんな安物で彼女気取りされたら西山がかわいそうだなってちょっと笑える。

「あれ、そうなの?こんなにかわいい子ほっとくなんてバカな奴らだな」

ああ、やっぱり貴公子だなぁと爽やかな褒め言葉はありがたく頂いた。

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