たった一度のモテ期なら。
「なに?」

隣に顔を寄せて小声で聞くと、「奈緒が結婚すると思われてる」と囁かれた。

私が? なんで? と一瞬間ができて、やっと気づいた。

「あれ、別れたことみんなに言ってなかった?」

「「ええ?」」

男6人が声を揃えると大音量でこっちが驚く。

いつ?なんで?とみんなの注目の的になって聞かれるままに、2ヶ月くらい前、向こうに好きな人が出来て、と答えていく。

ここのところみんな忙しくて集まってなかったから、いちいち言って回ってはなかったか。綾香から適当に伝わってると思ってた。



「でも、普通にしてたよな」

西山が意外そうに言う。泣きはらしたりはしなかったの、確かに。

「ずっと遠距離だったからね、意外といないのが普通になっちゃって。会う時の気持ちの盛り上げ方がわかんなくなったというか……」

「向こうから別れ切り出すの期待してたとか?」

「そう言うとなんかひどいね。嫌いになったわけじゃないから、終わりもちょっと難しくて」

自然消滅でもおかしくない雰囲気だったのに、ちゃんと終わりを示してくれた彼にはむしろ感謝しているかも。

好きになったのはいつもそばにいる職場の人だと聞いて、納得もしていた。

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