たった一度のモテ期なら。
翌日、データを単純化したファイルを用意して、同じブースを陣取ってPCを二人で覗き込んでいる。

西山に相談しようと思って整理してたことで、実は行き詰まりは少し解消しつつあったけれど、でも完成してはいない。

「これもともと作ったの誰? なんか混乱してないか」

「数年前までいた人なんだって。今までコピーして使いまわしてたんだけど、誰もちゃんと理解してなくて」

「めんどくさいタイプだな、それ。最終的に何したいのか説明してみて」

話を聞いていくつか質問した後、どんどん修正を加えていく西山に、何をしているか解説してもらう。

「結構ファイル重くなってるよな。思い切ってすっきりさせるか」

そう言うとファイルをコピーし、無駄な関数や参照を外してすっきりとした形に整理していってくれた。



「あとは元データ入れて、念のため数字合わせてみて」

うーん、全部は理解しきれていないから、あとでじっくり見直そう。

「……天才?」

「秀才だな。一課でこき使われて覚えた」

「すごいね。ほとんど席にいないのに。業務外で勉強してるの?」

「何が嬉しくて休みの日までPCいじってるんだろうなと思ったけどさ、使えるようになると結構便利。下っ端仕事だとしても手動かして覚えといて損はないかな」

見た目と要領の良さで仕事を回していると思われがちだけど、この人は水面下で努力もしてる。

「……西山のそういうところ、ほんと尊敬してる」

「おおげさ。褒め殺しても何もでないぞ」

そう言って頭を小突いて来ながらも、西山もちょっと自慢げだ。

私が時間かけてもうまくできないことを、片手間に軽々身につけていくんだ。同期って言ってもレベルが違うよね。

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