たった一度のモテ期なら。
しびれを切らしたように「どうにかなってるの?」と聞く綾香に「ごめん、何が?」と聞き返してみた。
「小林くんとはどうなったの?」
え? 今急にその話? どうもなってないけどっていうか、知ってるでしょそんなこと。
「小林くんて?」
「こないだの西山の友達。口説かれてるの、この子。つれなくしても諦めないみたいよ」
原ちゃんに説明しているけれど、どうしたの綾香。そんな話じゃなかったでしょ?
「しかも富樫課長に呼ばれて本社行ったりしてるし。そっちにも誘われてるんでしょ?」
「綾香?どうしたの?酔っぱらってる?」
「いいなぁ。結局最後に選ばれるのはさぁ、こういうほんわかかわいらしい子なのよ。ほんと、気が強くてすみませんでした!」
誰にかわからない謝罪を強く述べる綾香を見て「男だったか」とボソッと隣から声が聞こえた。
なにこれ、助けて。と思うけれど、いつもこういう場を収めてくれる西山がいない。
「まあまあ、落ち着け丸野。お前振るような男はろくなもんじゃないって」
「誰が振られたって言ったの!」
原ちゃんが油に火を注いだ形になり、3人で目を見かわして「撤退しよう」とつぶやき合う。