たった一度のモテ期なら。

なんとか2人とは駅で別れて、1人で電車に揺られながらやっとさっきのことを反省する。

あー、原ちゃんに謝るべきだったかも。変なこと言ってごめんねって、本気じゃないから安心してって。そんなのわかってると思うけれど、あんな形で『一番好き』とか言われるのって変な気分だよね。


電車の冷たいドアにもたれかかると、薄暗く反射する自分の顔が見える。冴えない顔だ。

西山はどこから聞いてたのかな。別にどこからでもいいけど、同期内でゴタゴタするなって言われているのに勘違いされちゃったりしてないかな。

あ、事情は今頃聞いてるだろうな。うん、だから、なんとも思ってないよね。

小林くんと付き合ったらって言われてるのに、原ちゃんがいいって言ってるのは感じ悪いかもしれないけど。

だって小林くんのことはよく知らないし、誰にするのってその三択はそもそも無茶ぶりだから。


西山にも謝ったり話したりするべきかと一瞬思って、それも変だと脳内で却下する。

西山はただ面倒くさいことにならなければいいだけ。自分が巻き込まれなければいいんでしょ……そんなの最初から知ってるから大丈夫。

せっかくの同期飲みでも気持ちが上がらない日もあるなってため息をついたら、暗い窓が少し白く曇った。

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