たった一度のモテ期なら。

「原ちゃんは、身近な人を好きになったり付き合ったりしたことってある？」

「俺はたいてい『いい人』扱いされるって前に言わなかったっけ」

「そっかぁ。仲良くなっても恋愛ではないみたいな？」

「それな。好きな子にもそういう扱いされがち」

自嘲するように言う原ちゃんに、もうすこし聞いてみる。

「そういう時はどうするの？ 自然に諦められるのを待つの？」

「諦める前提かよ」

「あ、ごめんね。でも友達関係壊すのも嫌だったりするものかなって」

いつもながらの失言の言い訳をすると、原ちゃんはひときわ深くため息をついた。

「それはもちろんある。無理だってわかってて言っても仕方ないって思う日もあるし、でも言ってみたらなんか変わるかなって思う時もある。今も、結構そういう状態」



「今？ え、もしかして」

話を聞きながら急に思い当たった私を、無言で原ちゃんが見返す。

「ごめん、全然気づかなかった。そうなの？」

「影森鈍いからな。そこがいいんだけどな……あのさ、もし、その、ちょっとでも真面目に考えてくれたら」