たった一度のモテ期なら。
「応援する」

「へ?」

原ちゃんの声が裏返った。いい人のまま終わるつもりかもしれないけど、原ちゃんにはそんなのもったいない。不毛な片思いなんて私だけで十分。

「私ね、似合うと思う。綾香って原ちゃんには意外と甘えてるでしょ。帰りも送ってもらったりして」

「いや、あれは甘えてるっていうか使われてるっていうか」

「そういう素を見せられる相手がいいと思うんだよね、綾香には。原ちゃんは、見た目だけじゃなくて全部を見てて好きってことでしょ?綾香にはきっとそういう人がいいと思う」

「……いや、それはどうかな」

首をひねるような原ちゃんには、先ほどの真面目な面持ちはもうない。



確かに今は綾香の目は富樫課長を向いてるかもしれなくても、私が応援したいのは原ちゃんだと熱心に言ってみる。

「本当だよ。でも私が変に首突っ込まないほうがいいよね。陰ながら応援してるね」

「そんな応援はいらないんだけど……まあいいや、今日は。そっちはどうなの。小林くん、だっけ?」

「今度会うんだけどね。もし向こうから言われたら、付き合ってみてもいいのかなって」

あえて軽く言ってみた私に、原ちゃんは目を剥いた。

「本気か?」
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