たった一度のモテ期なら。
「付き合ったら好きになれるかもしれないでしょ。西山にもオススメされたし」

「なんだよ、そんなの俺は嫌だよ。影森が好きでもない男と付き合うのを応援する気はない。丸野にもモテ期とか言われてただろ。焦ってそんなちょっと言い寄ってきたようなのと付き合うことないだろ」

「本当にモテ期なのかな。だったら好きな人にだけモテたかったな」

なんだか色々と投げやりな気分だなって自分でも知ってる。

「好きな人?」

「ううん、なんでもない。でも新しい恋愛してみたほうがいいかなって思ってて」

富樫課長の提案も少し考えたけど、やっぱり私は今の環境が好きだしあんな大きな会社は自分に似合わないと思う。西山ならともかく。

だから、綾香が言うように『次の恋』に踏み出してみるのがいいのかもしれない。




「仲間内はダメとか、そんなの全然関係ないと俺は思う」

原ちゃんがまた真剣な面持ちになった。急になに?といぶかってから、あ、好きな人って原ちゃんもそう思ってるんだとわかった。

「やだなぁ、なんかみんなにバレバレなんだね」とまた情けなく呟いてしまった。

「自分で気づいたの最近なんだよ?それに西山を困らせたくはないの。去年のあの子の時も嫌がってて大変だったでしょ」

「なんだよ、西山かよ……勝てる気しないな」

「勝てる気?」

「いや、こっちの話。とにかく焦って決めないほうがいいって。で、言うつもりないわけ?」

「西山に?」

重々しく頷く原ちゃんは、自分の恋のことと照らし合わせて考えているんだろうか。


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