たった一度のモテ期なら。

原ちゃんには『付き合ってって言われたら』と話をしてしまったが、会って話してみると小林くんが私に好意を持ってくれてる実感はあまりない。

何度か誘ってくれたのを断り続けるわけにもいかず、年度も変わって仕事が落ち着きはじめた日曜日の午後、小林くんと2人で会っている。

駅で待ち合わせたら、車で来たんだと言われて映画の後も少しドライブしてお茶をすることになった。

デート、なんだろうなぁ。

なんだかまるで他人事みたいにそう思って、私は終始ぼーっとしていた。

この人と付き合うってことになったらどんな感じがするんだろうと考えていたら、「どうしたの。俺の顔になんかついてる?」って困ったように聞かれてじっと見ていたことに気づいた。

「仕事忙しいのに呼び出してごめんね。でも会えてよかったよ」

「うん」

「このあとどうする? 行きたいところある?」

「ごめんね、ちょっと疲れが溜まってるみたい」

ちょっとマイペースさは感じるけれど、たしかに『いい奴』なんだろうと思う。でもなんだか泣きたくなって、早めに帰ることにさせてもらった。




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