たった一度のモテ期なら。
うちの少し手前で降ろしてもらって車を見送ろうとしたら、小林くんも素早く降りて歩道側に駆け寄って来た。
「奈緒ちゃん」
ここで何か言われるのかと顔を見つめ返したところに、思いがけず素早くキスをされた。唇に、あいさつみたいな軽いキス。
「お大事にね」
少し照れたように言って、小林くんは車に駆け戻った。
発進した車が見えなくなるまで、私はぼんやりとそこに立ったままでいた。キスされた地点から一歩も動けず。
そんなに深いキスじゃなかった。無理やりでもなかったと思う。でも、身体が硬直した。
「気を持たせるのがうまい」と確かに綾香が言っていたと思い出していた。
そうなのかもしれない。小林くんにも気を引く素振りをしたのかもしれない。好意を持たれていることは知っていたはずだ。今日のはデートだって気づいていた。
「付き合おう」って言葉から恋が始まるばかりじゃないって知ってる。だから別れ際のキスだってきっと想定内であるべきことで。
でもそのあと、唇がずっと気持ち悪くて。付き合ってみたら好きになるなんて、きっとない。そんなことに今更気づいた。
「奈緒ちゃん」
ここで何か言われるのかと顔を見つめ返したところに、思いがけず素早くキスをされた。唇に、あいさつみたいな軽いキス。
「お大事にね」
少し照れたように言って、小林くんは車に駆け戻った。
発進した車が見えなくなるまで、私はぼんやりとそこに立ったままでいた。キスされた地点から一歩も動けず。
そんなに深いキスじゃなかった。無理やりでもなかったと思う。でも、身体が硬直した。
「気を持たせるのがうまい」と確かに綾香が言っていたと思い出していた。
そうなのかもしれない。小林くんにも気を引く素振りをしたのかもしれない。好意を持たれていることは知っていたはずだ。今日のはデートだって気づいていた。
「付き合おう」って言葉から恋が始まるばかりじゃないって知ってる。だから別れ際のキスだってきっと想定内であるべきことで。
でもそのあと、唇がずっと気持ち悪くて。付き合ってみたら好きになるなんて、きっとない。そんなことに今更気づいた。