たった一度のモテ期なら。
「そ、そんな感じの人ではないと思う。私みたいに空気が読めないタイプというか」

「それはないと思う。西山に言うわ、変なやつ紹介してんじゃないって」

「ダメダメダメ。それはダメ」

「言っとくけどあいつだって怒るよ?奈緒が丸め込まれるみたいにやられちゃったら、どう責任取ってくれるんだって」

「ないからないから。断ろうと思って相談してるんだってば」

男前な綾香を必死でなだめた。その方向は困るの。

「じゃあとりあえず、私がいい感じにメッセージ打ってあげる。見せて。遡って見るけどいいよね?」

綾香はスクロールしてメッセージのやり取りを眺めると、素早く返信を打ち込んだ。無理に外出したのがよくなかったみたい、と書いてある。

小林くんから即返信があったみたいで、何度か短いやり取りをした後、「これでよし」とにっこり笑って返してくれた。

これからは余計な外出は控えようと思う。ミキマコちゃんに会える機会があればいつかまた誘ってね、というような内容だ。

「これでわかんなかったらバカよ。これでもまだ誘いがあったら私もついてくから」

「感じ悪くは」

「ないって。こっちが悪者になるのも嫌だし、天然路線で押したから。大丈夫」



「で、モテてる自覚はやっと芽生えましたか、お嬢さん」

一仕事終えてお弁当を食べ終わると、綾香は笑って聞いてきた。

「うん、小林くんについては。富樫課長にも確かに誘われはしたけど軽いというか、コーヒーみたいな」

「なに?お茶に誘われただけじゃないでしょ?」

うーん、コーヒーがわりに口説いてるとか綾香には言いたくないなと思う。

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