たった一度のモテ期なら。

結局数日がかりで書類提出を勝ち取り、今回の月次決算も無事締まった。何か改善していかないとと思いつつ、次の締めだっていつもすぐ来る。

少し疲れたなぁ、誰かと話したいなぁ、とひとりで歩く帰り道。タイミングよく誘ってくれたのは綾香と原ちゃんだ。



【このまま直帰だから今日はここにいます】

URLが貼り付けられているお店は、会社から数駅離れた駅の近くだ。

【誰か来てね、待ってるよ】

同期みんなへの呼びかけだけど、返事はまだない。でも1時間くらい前の履歴だからまだいるはずだ。



急いで電車に乗って駆けつけると、入口付近からも原ちゃんの声が聞こえてすぐに席がわかった。

「よかった、まだいた!」

「奈緒じゃん!やった!私の勝ち!」

顔を出した私に、原ちゃん並みの大声で綾香が歓迎してくれるけど。

「なに? 誰が来るか賭けてたの?」

「まあそんな感じ。影森から反応ないから来ないかと思ったんだけど」

原ちゃんは眉をひそめて困っている様子だ。

「ごめんね。誰だったら原ちゃんの勝ちだったの?」

「いや別に。西山とかさ」

「なにか賭けてたの?」

綾香はニヤニヤ笑っていて、善は急げだよ、と原ちゃんの肩を叩いた。教えてくれないらしいけど、まあいいか。

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